現状・相談のきっかけ
書店業界は長期トレンドとして、アマゾン等を代表とするネット販売や電子書籍に市場が侵食され、店舗型の書店市場は減小の一途をたどっています。当社は集客力があるJR京浜東北線港南台駅からすぐの約85店が集結するショッピングモールの4階に立地しており、一定の集客は出来ているものの、10年前に比して約7割程度の顧客数となり売上が減少していました。
そのような折に、令和2年からの新型コロナウイルス感染症流行の影響で外出自粛、時短営業が進み、来店客数および売上が大幅に減少してしまいました。先行きが不透明な中、資金繰りが苦しくなり、「一時的な事もあるが長期的にどう生き抜いていけば良いか」と相談に至りました。
課題内容
まず確認したのが、コロナによる影響とそもそもの事業環境の切り分けです。コロナによる影響は一時的なものですが、そもそもの事業環境は長期的なものです。これを分けて正確に課題認識をする事に注力した結果、根本的な課題は以下の2点だと認識しました。
- 集客(損益分岐点)に見合わない高額家賃
- 顧客に対する価値提供施策強化
高額家賃については、デパートであることから仕方が無い面もあります。しかし、これは10年前に締結した契約です。当時であれば成り立った水準かもしれませんが、現在の市場環境の場合、どんなに努力しても損益分岐点を超える事は難しい水準でした。また、価値提供施策強化については、率直に今までの立地に胡坐をかいていた事を反省し、顧客価値についての強化を腹落ちしてもらいました。
支援内容
家賃交渉は、当社の存亡をかける覚悟で
家賃契約は5~10年となっており、利益ベースで考えると数千万円の影響となる交渉なので、勢いや感情だけではなく相手を見据えた合理的で緻密な交渉をしていくようアドバイスしました。具体的には、相手はサラリーマンである事から、交渉に出てくる人それぞれの立場を考えて対応するよう伝えました。また、最終的には出ていく事も検討し、相手にもその本気の覚悟だけは感じ取ってもらえる交渉をするように助言しました。
ポイント
経営改善、特に資金繰り改善は短期/長期、難易度、効果を勘案しながら取り組みますが、社長が本気にならないと実を得ることはできません。当社の場合についても、当初は、家賃交渉がいかに経営インパクト大きいものかを本質的に理解しておられないようでした。そこで、この家賃交渉が失敗に終わると数年後には潰れてしまうことを数値で示し、社長の覚悟を決めてもらうよう努めました。
成果・今後の展望
約10ヶ月による交渉で、当社固定費の約15%減となる家賃水準を獲得することができました。交渉材料としては、家賃の固定/変動割合、事務所スペースの変換有無、敷金返還、事業計画でした。その中でも、事業計画については、交渉相手がデパートであり、当店の集客がデパートの集客とも関わるため“今後の連携を約束すること”で交渉後のしこりも無く、良好な関係を保つことができています。
相談者の声
毎月定期的に交渉の事や今後の事を相談させて頂き、本当に助かりました。 交渉はほぼ打合せどおりの展開となり、交渉相手とも良好な関係を保ったままで経営が成り立つ水準の妥結となった事、本当に感謝です。 今後は顧客価値を常に意識しながら施策を実行していきます。

