現状・相談のきっかけ
コロナ禍により在宅勤務や外出自粛の影響でこれまで平日の日中に来店が少なかった子育て世代の母親層が足を運ぶようになったこと、プチ贅沢と言った言葉の流行などもあり、駅から徒歩15分の住宅街に立地する当店の売上は好調でした。しかし、コロナ収束後、人々の外出が活発になるにつれ来店客数は急減し売上約20%減少し原材料高騰を価格に反映できない等の要因も重なり赤字に転じてしまいました。このままでは経営が厳しくなると感じ、売上拡大とPR、集客に関して相談に至りました。
課題内容
相談を受けて分析したところ、売上拡大以前に「毎月の利益額や原価率が把握できない」という課題が明らかになりました。
代表者はパン製造以外の全ての業務を担っており、店頭での接客、ネット販売等に加えて会計システムへの入力作業も行っていました。入力方法は非効率で、レジ売上を手で打ち込み、さらに通帳記帳やレシート、カード明細をかき集めて入力するという大変手間のかかるものでした。
結果として、原価率の推移や利益の把握ができておらず、本来注力すべき商品開発や販売促進の時間を十分に確保できていませんでした。そこで「入力の手間をなくすこと」と「売上・利益をリアルタイムで見える化すること」を最優先課題に設定しました。
支援内容
クラウド会計で手入力ゼロへ!数字の苦手意識も払拭
当社顧問税理士の事務所が利用するシステムに連携可能なクラウド会計ソフトを調査し、事務所との導入交渉を支援しました。複数の通帳やクレジットカードを一本化し、レジ売上やクレジットカード、銀行口座とクラウド会計システムとの自動連携を整備しました。
また、少額の支払いも極力事業用カードで決済するルールを徹底し手入力をほぼゼロにしました。これによりスマホアプリから日々の売上や利益が見える化され、夫婦で数値をいつでも共有できる仕組みが整い、数値を根拠に販促計画や商品開発を検討できるようになりました。
ポイント
数値への苦手意識が強かったため、まずは「気が重い経理」から「グラフを見る楽しさ」、「自動連携の便利さ」に気づいてもらうことを意識しました。さらに単なる効率化ではなく「数値を経営に活かす」ことを目的とし、夫婦でアプリを共有し自然に経営会議が生まれるように工夫しました。
加えて決算書は損益・資産・負債を蛍光ペンで色分けし、月別損益や損益分岐点の見方を解説しました。手間削減で得られた余力を前向きな経営行動へ転換できるよう伴走支援しました。
成果・今後の展望
会計入力に費やしていた時間がほぼ不要となり、経営数値がリアルタイムに把握できるようになりました。これにより、新商品の開発やネット販売の強化、Instagramでの情報発信、店内POPの充実など販促活動に時間を充てられるようになりました。
また、地域事業者と連携したマルシェの開催など新しい集客施策も実施できるようになり、売上回復と顧客増加につながる基盤を整えられました。
相談者の声
今までは会計入力に多くの時間を取られ、「やらなくては」と常に追い詰められていましたが、その負担から解放され本当に嬉しいです。気が重かった数字管理も、今ではスマホでグラフを見るのが楽しみになりました。
決算書の読み方も蛍光ペンで一緒に作業したおかげで理解できるようになり不安が和らぎました。今では夫婦で利益状況を共有できる安心感があり、余裕が生まれたことで販促や新商品開発に取り組む時間が増え、経営を前向きに考えられるようになりました。

